基本システム:3-4-2-1とその可変
基本フォーメーションとして、レヴァークーゼンは紙面上では3-4-2-1を採用していました。しかし実際のビルドアップ局面では、まったく異なる配置を見せます。
ビルドアップ時の変形:3-2-5構造
レヴァークーゼンがボールを保持してビルドアップを開始すると、構造は根本的に変化します。3名のセンターバックは後方に留まります。2名のボランチは深く落ち、3名のセンターバックとともにビルドアップ時に安定した5人のラインを形成します。
同時に、2名のウイングバックは前線へ大きく押し上がります。彼らはほぼウイングのように振る舞います。2名のシャドーはライン間に位置取ります。これにより、前線には実質5名の攻撃的プレーヤーが配置されることになります。2名のウイングバック、2名のシャドー、1名のフォワードです。
結果: ビルドアップ時は3-2-5になります。ビルドアップを担う3名、アンカー役の2名、攻撃を担う5名です。
| 局面 | フォーメーション | 役割・機能 |
|---|---|---|
| 守備時 | 3-4-2-1 | コンパクトな中盤のライン |
| ビルドアップ時 | 3-2-5 | 幅と深さを同時に確保 |
| プレッシング時 | 3-4-3 | 高い位置でのプレスライン、サイドを締める |
この柔軟性は偶然の産物ではありません。入念に落とし込まれたものです。すべての選手が各局面における自身のタスクを把握しています。
目的のあるポゼッション
よくある誤解として、「アロンソはポゼッションそのものが好きだから、レヴァークーゼンはボール保持率が高い」というものがあります。これは事実ではありません。
レヴァークーゼンにとって、ボール保持は自己目的化されたものではなく、相手を動かすためのツールです。
狙い: 相手を陣形から引き出すこと。スペースは偶発的に生まれるのではなく、意図的なボール動かしによって作られます。短いパス交換で相手選手を引きつけ、それにより別のエリアにスペースを創出します。
相手を引きつける3つのメカニズム
アロンソは、相手のプレッシングを利用するための3つの具体的な方法をトレーニングしています。
1. ショートパスによる引きつけ
2名の選手が短い距離でパスを交換します。相手の3人目の選手がボールへ寄せてきた瞬間、その背後にスペースが生まれます。そのスペースを即座に活用・進入します。
2. プレスラインを打ち破るパス
意図的な縦パスで、相手の第1プレスラインを破ります。頭上を越すのでも横を通すのでもなく、ラインの間を射抜きます。受け手は相手が本来プロテクトしたかったゾーンでフリーでボールを受けます。
3. 運ぶドリブルとサイドチェンジ
選手が相手に向かってアクティブにドリブルで仕掛けます。これにより相手は決断を迫られます。その瞬間に素早いコンビネーションから逆サイドへ展開します。そこにはほぼ常に数的優位が存在します。
ポジショナルプレー:数的優位を生み出すフリーマンの論理
トレーニングにおいて、アロンソはクラシカルなポジショナルプレーの練習形式を取り入れています。ただし、重要な要素が1つ加えられています。
フリーマンを加えた4対4+3
レヴァークーゼンの典型的なロンド:狭いスペースでの4対4に、常にボール保持側のチームとしてプレーする3名のフリーマン(ジョーカー)を加えます。これにより、ボール保持側は常に7対4の数的優位を得ることができます。
この練習で鍛えられるもの:
- プレッシャー下での素早い意思決定
- 少ないタッチ数(1タッチまたは2タッチが目標)
- ボールロスト直後の役割切り替え:ボールを失った選手は即座にプレッシングを実施
「ポン・ポン・ポン(tac-tac-tac)」の原則:パスは短くリズムよく供給されます。停滞させず、ボールを持ちすぎません。ボールが動き、選手が動きます。
| 原則 | 試合における意味 |
|---|---|
| 1〜2タッチ | 相手に陣形をスライドさせる時間を与えない |
| 即座の役割切り替え | ボールを失ったその場所からプレッシングを開始 |
| フリーマンによる数的優位 | 常にフリーの選手を探し続ける |
ハーフスペースと対角線のサポート
レヴァークーゼンのシステムにおいて最も重要なエリアの1つがハーフスペースです。
ハーフスペースとは?
ピッチは垂直方向に5つのゾーンに分けることができます:左サイド、左ハーフスペース、中央、右ハーフスペース、右サイド。
ハーフスペースは最も戦術的価値の高いゾーンです。ハーフスペースからのパスは対角線状になります。縦パスよりも守備側にとって守りにくく、同時に深さと幅の両方を生み出します。
レヴァークーゼンのシャドー——フロリアン・ヴィルツや、アンカー役のグラニト・ジャカ——は、好んでハーフスペースに位置取ります。そこから内側、外側、そして前方へとコンビネーションを組みます。
対角線のパス角度: パスの受け手は味方の真後ろには立ちません。斜めにズレた位置に立ちます。これにより、あらゆる方向へスムーズかつ素早く展開することが可能になります。
武器としてのウイングバック
左のグリマルド、右のフリンポン。両選手は優勝したシーズンにおいて、ゴールとアシストの両方で2桁の数字を記録しました。これはサイドバック/ウイングバックとしては異例の成果です。
グリマルド(左)
グリマルドは自陣の低い位置からスタートすることが多いです。そこから単にライン沿いを上がるのではなく、対角線状に中央へと進入します。そこから放たれる強力なミドルシュートは大きな脅威となります。相手は引いて彼に対応せざるを得ず、その結果、ヴィルツやフォワードにスペースが生まれます。
フリンポン(右)
フリンポンは従来のディフェンダーというよりも、本物のウイングのように振る舞います。サイドで1対1の局面を引き受け、ゴールライン際までえぐるか、内側へ切り込みます。彼のスピードは常に背後への飛び出しという脅威をもたらします。
核心となる原則: レヴァークーゼンのウイングバックは単なるサポート役ではありません。ゴールやアシストによって直接試合を決定づける、独立した攻撃的プレーヤーです。
中央からの攻撃
アクティブなサイドの選手を擁しながらも、レヴァークーゼンで最も危険な攻撃は中央を経由することが多くあります。
ラインを破るパス + 落としのパス
パターン:センターバックやボランチが、ライン間にいるシャドーへ垂直な縦パスを通します。受け手はボールを収め、即座に落とします(レイオフ)。そこへ3人目の選手がスペースへ走り込み、ラストパスを受け取ります。
なぜ機能するのか: 最初のパスで相手を引きつけます。相手が対応する前に落としのパスが出されます。そして3人目の選手が生まれたスペースを活用します。
アンカーとしてのダブルボランチ
グラニト・ジャカともう1名のボランチが中盤をプロテクトします。サイドの選手が高い位置を取っている時でも、彼らはアクティブに前線へプレスへ行くことはありません。代わりに低い位置でコンパクトに留まり、相手のカウンターに備えます。
中盤でのボールロスト時、レヴァークーゼンではほぼ常に、2名のボランチが素早く戻ってスペースを消す動きを見せました。
レヴァークーゼンからマドリード、チェルシーへ
前述のシステムは、アロンソのバイエル・レヴァークーゼン時代(2022年〜2025年)のものです。そこで彼はシステムを構築し、ブンデスリーガ制覇を果たしました。それ以来、彼は2度クラブを替え、その都度新しいスカッドに合わせてシステムを適応させてきました。
レアル・マドリード:3バックから4バックへの変更
2025年、アロンソはレアル・マドリードの監督に就任しました。スカッドが3バックに適した構成ではなかったため、彼は4バックへと変更しました。試合展開に応じて4-3-3や4-2-3-1として解釈され、非保持時にはコンパクトな4-4-2を形成しました。構造化されたプレッシング、縦への推進力、チーム全体としてのコンパクトさといった原則は維持されました。
マドリードがペースとスペースを支配できる局面では機能しました。しかし、引いたブロックを作る相手には苦戦を強いられました。さらに、スカッド内での役割やポジションを巡る摩擦も生じました。2026年1月、就任から8ヶ月未満、バルセロナに敗れたスーペルコパの翌日に任期は終了しました。
チェルシー:3バックへの回帰
2026年7月1日より、アロンソはFCチェルシーの監督を務めています(2030年までの契約)。プレシーズンでは当初4-2-3-1を試しましたが、シーズン開幕とともに3バックへと回帰しました。レヴァークーゼン時代のモデルに極めて近い3-4-3を採用し、絞った位置を取るウイングバック、リスク管理を行うダブルボランチ、ライン間で自由を与えられたシャドーを配置しています。絞ったサイドプレーヤーの原則はグアルディオラに由来するものであり、ペップ・グアルディオラの戦術で詳しく知ることができます。
フォーメーションよりも原則が勝る
アロンソは3つのクラブで3つの基本フォーメーションを併用してきましたが、一貫して同じ原則を適用してきました。フォーメーションだけを模倣しても、本質を見誤ることになります。移植可能なのは、数的優位を作ったビルドアップ、ハーフスペースの攻略、そして各局面での明確な役割分担です。
2026年8月時点の情報。
アロンソのコーチングスタイル
戦術だけで成功のすべてを説明することはできません。アロンソがどのように選手を導いているかも同様に重要です。
非常に明確な指示: アロンソのコミュニケーションはシンプルです。どの状況でどの選手に何を求めているかを正確に伝えます。推測の余地を残しません。
意味のある中断: レヴァークーゼンでの練習の中断は、単なる休憩時間ではありませんでした。それらは短く効果的な学びの瞬間(Teachable Moments)でした。アロンソはプレーを止め、2つの文章で状況を説明し、すぐにプレーを再開させます。
ツールとしての称賛: アロンソは公の場でも具体的に褒めます。「ナイスプレー」にとどまらず、「相手のボランチがすでに左へスライドしていたから、あのパスを出す最高のタイミングだった」と伝えます。これにより選手は、何が正しかったかだけでなく、なぜ正しかったのかを理解することができます。
アマチュア・育成年代の指導者に贈る5つのポイント
すべての指導者がレヴァークーゼンを指導できるわけではありません。しかし、その核心的な原則はU-16やローカルリーグのチームでも実践可能です。
| # | ポイント | 実践方法 |
|---|---|---|
| 1 | 明確な基本陣形 | 守備とビルドアップの2つの固定された構造を落とし込む |
| 2 | 引きつけのトレーニング | 選手がアクティブに相手を引きつける意識を持つ練習 |
| 3 | 数的優位のロンド | 週に最低1回は4対4+3フリーマンを実施 |
| 4 | 対角線のパス角度 | パス出し手の真後ろではなく、斜めの位置に立つようコーチング |
| 5 | サイドを武器にする | ウイングプレーヤーに内側へ切り込んでフィニッシュすることを許可する |
FAQ:シャビ・アロンソの戦術
シャビ・アロンソ率いるバイエル・レヴァークーゼンはどんなシステムを採用していますか?
基本フォーメーションは3-4-2-1です。ビルドアップ時には3-2-5へと変形します。3名のセンターバックと2名のボランチが低い位置に留まり、2名のウイングバックと攻撃的プレーヤーが前線で5人の攻撃ラインを形成します。
レヴァークーゼンにおける「目的のあるポゼッション」とはどういう意味ですか?
アロンソにとってボール保持は自己目的ではありません。狙いは、ボールを動かすことで相手に判断を強制させることです。短いパス交換で相手選手を引きつけ、生まれたスペースを即座に活用します。
シャビ・アロンソの「引きつけのメカニズム」とは何ですか?
アロンソは3つの引きつけ方法をトレーニングしています。相手を引きつける短いパス交換、プレスラインを破る意図的な縦パス、そして運ぶドリブルからの素早いサイドチェンジです。
なぜグリマルドとフリンポンはこれほど危険な存在なのですか?
両ウイングバックは単なる守備的プレーヤーとして起用されていません。グリマルドは対角線状に内側へ進入し、ミドルシュートで脅威を与えます。フリンポンはほぼウイングのように機能します。両選手ともに優勝シーズンで2桁のゴールとアシストを記録しました。
ハーフスペースとは何ですか?なぜ重要なのですか?
ハーフスペースとはサイドと中央の間に位置するゾーンです。ハーフスペースからのパスは対角線状になり、守備側にとって対応が困難になります。レヴァークーゼンのシャドーはここを主戦場とし、内・外・前へとコンビネーションを展開します。
育成年代でレヴァークーゼン・スタイルを実践するにはどうすればよいですか?
まずは明確な基本陣形から始めましょう。引きつけの原則を意図的にトレーニングし、数的優位のロンド(4対4+3フリーマン)を活用します。対角線のパス角度をコーチングし、サイドの選手に内側へ切り込む自由を与えてください。
アロンソは選手とどのようにコミュニケーションをとっていますか?
明確で直接的、かつ具体的です。練習の中断は短い指導の機会として活用されます。称賛も具体的であり、単に「良かった」だけでなく、なぜその決断が正しかったのかを解説します。
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